1人が本棚に入れています
本棚に追加
この世界はとても狭い。
とても狭い――と言っても、それはただ僕が漠然と思っている何の根拠もないこの世界への感想だ。何と比べてそう思うのか、僕はその物差しを持っているわけでもなければ、なぜ自分がそう思ったのかもわからない。
ただ、なんとなくそう感じてしまった。
それ以外に、僕の体が感じとったその感覚を、どんな言葉を使って表現すればいいのだろうか。
僕はその言葉を知らない。
僕が生まれ育ったこの世界には陸と空というものがあり、陸には山と川、そして僕たちが暮らしている大きな街、空には太陽と月というものがある。それは、先日学校で習った僕の知識だ。
この世界はそれだけで簡単に語ることが出来てしまう。
それだけで、というのも僕は無意識に何かと比べてしまっている気がするけれど、先生はこの世界にはそれ以外のものは無いと言っていたのだから、きっとそうなのだろう。
でも、先生の言う通り、本当にこの世界にはそれ以外のものが無いのだろうか?僕はそんな疑問を頭に思い浮かべる。でも、今までその答えに辿り着けた試しがない。
きっと、世界は目に見えているものが全てなのだから、それ以上でもそれ以下でもなく、疑問に思うことすらおかしいことだと、僕はそうして自分を無理やり納得させている。
というよりは、お父さんにその疑問をぶつけてみた時に、そんなおかしな質問をするなと酷く怒られたから僕はそうしているだけだ。
そうだというのに、僕はまた懲りもせずこんな疑問を頭に思い浮かべる。
この世界とは、また違う世界がどこかにあったりはしないのだろうか?
例えば、あの真っ黒な空の向こうとかに……。
最初のコメントを投稿しよう!