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いつもに増して長い読経だった。
そして、ふと顔を上げると、私たちが登って来たのと逆の方向から井上のばあさんが奥さんに連れられてやって来た。
そして黙って私たちの傍に立つとばあさんも数珠を持つ手を合わせてキシュウマイ様をじっと見つめていた。
そして、Fの読経に合わせてばあさんも読経を始める。
Fは読経を井上のばあさんに任せ、バケツの水の柄杓を手に取った。
「大村、手出せ…」
大村はそう言われてFの前に手を出す。
そして、掌にある痣にFは水を掛け始めた。
「キミコ…」
今度はキミコを呼ぶ。
キミコはキシュウマイ様の前に膝を突いて、Tシャツの襟を捲った。
「ちょっと冷たいけど我慢せえよ」
Fはキミコの肩に水を掛け始めた。
そして二人に交互に水を掛けながらまた読経を続ける。
今度はキシュウマイ様の石塔にも水を掛けた。
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