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井上のばあさんの読経の声が徐々に大きくなり、少しずつ前に出て、Fの横に立った。
「私がやるよ…」
ばあさんはFから柄杓を取ると、大村の手とキミコの肩、そしてキシュウマイ様の石塔に順番に水を掛けた。
私はふと気付いた。
キシュウマイ様の石塔に歪な形だが、大村の掌やキミコの肩にある痣と同じ、ビショップの印が彫られていた。
家紋か…。
私はそう思いながら、手を合わせた。
不思議と頭痛は引き、汗も流れなくなっていた。
「セキ、梨を割ってくれ」
Fは関口に言う。
関口は地面に置いた梨を一つ取ると、素手でその梨を二つに割った。
そしてその梨をキシュウマイ様の石塔の前に備えた。
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