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それから何年も経っての事だが、私は大村に偶然会った事がある。
もうお互いに社会人として働いていた。
その頃Fも東京でサラリーマンをしていたのだが。
それはとあるコンピュータ系の展示会での事だった。
大きな展示会場で、集めたパンフレットを袋に詰め替えていると、私をじっと見る男が居た。
直ぐには思い出せなかったのだが、男は私の前に立ち、
「覚えてるか…。大村」
と名乗って来た。
その後、キッチンカーみたいな車で売られていたコーヒーを飲みながら、二人で少し話した。
大村も私同様に、コンピュータ関係の会社で働いていた。
そして、キミコと結婚し、大阪に住んでいると話していた。
「あ、あの痣、どうなった」
大村は掌を私に見せた。
そこにはその痣は残っていなかった。
どうやらFが言ったように綺麗に消えてしまった様だった。
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