王様の公園

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王様の公園

「今日も、来た、のです、か?」  彼女は僕の顔を見るなり感情の無い声で話す。いや、彼女に感情は無い。彼女は機械だ。  機械の身体に、機械の声、そこに感情が無いのは当たり前だ。 「君が呼んだんだよ?」 「ですが、不法入国、です」  彼女はまた感情の無い声で言う。 「はい、僕のパスポート」 「.....」  彼女は僕が出したパスポートを数秒見ると顔をあげてまた僕の顔を見る。 「入国、目的、は?」 「君が来って言うから」 「入国、を、認めます」  いつものやり取りをする。ここまで行くといつも僕は彼女の隣に座るが今日は直ぐには座れなかった。 「それ凄いね」  彼女の頭の上や肩、膝、足下には沢山の鳩の群れが止まっている。 「この子たち、は、私の、国民たち、です」 「鳩が国民って」  この国には一つ、別の国がある。それが彼女がいつもいるこの狭い公園。  一様はちゃんとした国として認められているが彼女以外には誰もいない。 「私が、この、国、の、王様になって、もう3年になります」 「早いね」 「それと、同時に、戦争が終わって、3年が経ちました」  彼女は戦争をする為に作られた、人を殺す為に作られた機械少女だ。 「私は、戦後に、国への貢献、としてこの土地を、貰いました」  彼女は隣に立つ僕から視線を外し、公園の隅を見ながら言った。 「私は、戦争をした、機械生命体の、最後の、生き残りです」 「そうだね」  良く知っている。 「皆、先の戦争で、死にました」 「そうだね」  頷いた。 「私は、戦時中、貴方の国を、攻めて来た、敵を、滅ぼす為に、ここら一帯を、無差別に、攻撃しました」  僕は頷いた。 「それで、大事な話って?」  僕は今日、彼女に呼ばれた。彼女の大事な話を聞く為に。 「私は、貴方の家族を、その攻撃で、死なせました」  彼女は続ける。 「しかも、私は、貴方の右脚を、」  何故、その事を彼女が知っているのか疑問には思わない。彼女は機械少女だ、情報を集めるのに関しては一つの国に匹敵する。人1人の情報など簡単に集められるのだろう。  そして、彼女は本題に入る。 「貴方も、気付いて、いたのでは?」  僕は黙るが、彼女は一瞬を置くと、 「私は、貴方の人生を、無茶苦茶にしました。何故、会いに来る、のですか?」 「そうだね」  僕は彼女の隣に座り、松葉杖をベンチに掛ける。  僕の右脚は太ももから下は無い。 「貴方は、私を、壊せるのに、何故、壊さないの、ですか?」  僕は彼女の方へ、顔を向ける。 「それは、僕が君に.......」  僕の言葉と同時に鳩の群れが一斉に空へと飛び立つ。
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