スマホ猫

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 僕はえっ、と言いながら、また顔を上げた。大福はいない。当然、猫もいない。  ふと、僕はある事を思い出す。そういえば、僕がスマホを見ていると、必ず大福がやってきて「ニャー」と鳴いては、手に持っていたスマホに頭突きしていた。  普段は名前を呼んでも見向きもしないくせに、僕が何かをしていると邪魔しにやってくるのだから、マイペースにも程がある。  邪魔するのが猫の仕事だなんて言うけれど、保護し始めてた時に比べて僕は「もう、あっち行ってよ」なんて冷たい態度を取ってしまっていたような気がする。  そういえば、一昨日の晩もそんなことがあったことを思い出す。  これはきっと、僕の中の罪悪感が幻聴として表れているのかもしれない。  僕はスマホを弄るのをやめて、ベッドに放り出した。  その日の晩も、大福は帰って来なかった。  さすがに二日目にもなると、落ち着かなくなってくる。お腹も空いているだろうし、車に轢かれて、すでに土の中だなんて、嫌な想像が頭の中をぐるぐる駆け巡っていた。  学校に行っても、大福のことで頭がいっぱいで普段から身に入らない授業がさらに、拍車をかけていた。  家に帰るなり、早々に僕は家の周辺を探し回った。照れくささもあったけれど、自分から近隣の人に聞いたり、見つかったら教えて欲しいと頼んで歩いた。  近くの公園に行くと、一息つくためにベンチに座る。そういえば昨日、ログインしてなかったと、スマホを取り出してアプリをタップする。 「ニャー」  猫の鳴き声に僕は、変だと気付く。アプリが開き、見慣れたスタート画面が表示される。  タップする。「ニャ」と聞こえる。
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