スマホ猫

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 ロード画面。ログインボーナス表が現れ、それをタップする。 「ニャーォ」  まさか、アプリにそんな機能がついたのだろうか。でも、このアプリの趣旨に猫は関係ない。猫の日である二月二十二日にはほど遠い、今は六月だ。  僕はアプリから今度はネットのページを開こうと、ホームからインターネットをタッチする。 「ニャー」  またしても声がした。僕は唖然とする。  検索画面で『猫の鳴き声 スマホから』と検索をかけてみる。  だけど、そんな事例があるはずもなく、僕のスマホにそんな機能は備わっていなかった。  じゃあどうして、スマホから猫の声が聞こえるのか。僕は急に怖くなって、公園を後にすると急いで家に帰った。  ちょうどパートから帰ってきた母親を捕まえると、「ちょっとさぁ、スマホが変なんだけど」と言って、僕は母親にスマホを見せた。 「アプリ開こうとすると、猫の声がして……」  そう言って、実際にアプリをタップする。  すんなりと開き、猫の声がしない。 「あれ、おかしいな」  インターネットをタップする。やっぱり「ニャー」とは言わない。 「大丈夫。今日こそは帰ってくるから」  そんな同情的な言葉を告げられ、僕は逃げるように自分の部屋に向かった。  僕だけに聞こえる幻聴。何だかスマホを触るのが怖かった。  試してみる気にもなれず、スマホをベッドに放り出したところで、メッセージアプリが音を立てる。  そこは猫の鳴き声ではなく、普通のアプリの通知音だった。  もしかして、聞き間違いだったのかもしれない。僕は一縷の望みから、スマホを手に取って、メッセージアプリを開く。 「ニャー」  僕は絶句する。やっぱり猫の鳴き声がした。
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