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3. リオンとサラ、その家族
「ねぇ、どうしてネコは月夜にしかいないの?」
僕が聞くと、ママは青い目をまん丸にして「そういうものだからよ」と答えた。
「霜柱だって、冬にしかできないでしょう?」
霜柱。その響きを聞いただけで、その上を歩く楽しさに胸が弾んだ。ザクザクという音。踏み潰す時の、なんとも言えない足裏の感触。
僕がうっとりしていると、ママの隣で紅茶にジャムを入れながら、パパが言った。
「ひまわりは、夏にしか咲かないだろう?」
その言葉に、サラがとろんと目を細めたのが分かる。ひまわりはサラの好きな花だ。すらっと背が高くて、太陽の子どもみたいで、すごくカッコいい。
「それとおんなじだよ」
当たり前だろう? そう言われた気がして、僕は余計に首を傾げた。
当たり前は不思議。昔から決まっていることだって、きっと一つひとつ理由があるはずなのに。
「ネコってどこから来るの?」
「そうねぇ、月からかな」
「じゃあ朝になったらどこ行くの?」
「さぁ、考えたこともないわ」
子どもはなんでも不思議に思うのねぇ、と、ママが笑う。パパはサラと同じつやつやの黒い頭を揺らして、うんうんとうなずいた。
大人はときどき、話が通じない。横を向くと、金色のいたずらな目が僕を見ていた。
「サラ、何考えてる?」
「リオンと同じことじゃない?」
「ネコがどこから来るのか、調べるのは難しいよね」
「でも、朝どこへ行くのかなら、分かるかも」
やっぱり僕らは双子だ。同じことを考えている。
僕らはこそこそ話をやめて、席を立った。夜に備えて、作戦会議をしないといけないからだ。
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