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「大丈夫スか? お子さんたち、夜中にこっそり出かけてたりしません?」
「まさか。まだ一年生だし」
とは言え、祢津自身にも、自分が寝た後の世界に興味津々だった覚えはある。未知の事柄への好奇心が一番強かったのは、ちょうどあの年頃だったかもしれない。
* * *
「ただいま、子どもたちは?」
祢津は帰宅すると、出迎えた妻にまず双子の所在を尋ねた。
「残念、さっき寝たとこよ」
「そうか」
つま先で階段を上り、二階の手前にあるドアをそっと開ける。
双子が赤ん坊の頃は、こうして寝た子のところへ行こうとして、よく妻に怒られた。「やっと寝かせたところなのに」とふくれられても、仕事帰りに子どもたちの顔を見るのが、何よりの楽しみだったのだ。
双子は六畳の子ども部屋に布団を並べ、健やかに寝息をたてていた。
「まぁ、そうだよな……」
祢津はホッと息を吐いた。疑ったわけではないが、さっきの話がなんとなく心に引っかかり、早足で帰ってきてしまったのだ。
寝相の悪い息子の足を、布団の中にしまってやる。二人に色違いのパジャマを買ったのは去年なのに、すっかり丈が短くなっていた。来年はもう着られないだろう。そもそも、男女の双子はいつまでお揃いを嫌がらずに着てくれるだろうか。
娘の顔を照らす明かりに顔を上げると、カーテンの隙間から、さっき松田のスマートフォンで見たような満月がのぞいていた。
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