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4. 祢津良太郎、その家族
ガクン!
地面が縦に揺れたような衝撃を感じた。薄暗い部屋で目覚めた祢津が周りを見回すと、隣のベッドで妻も半身を起こしている。
「今の、地震?」
「かもな。結構大きかったんじゃないか?」
「5時か……子どもたちを見てくるわね」
妻が布団をめくり、早足で部屋を出ていく。祢津がスマートフォンを起動させても、地震速報はまだ入っていなかった。
「きゃー!」
隣室から妻の悲鳴が聞こえ、慌ててベッドを下りる。
「どうした!?」
祢津が駆け込むと、子どもたちの足元に膝をついた妻が、なんとも複雑な顔で振り向いた。
「子猫がいるの!」
「……猫?」
おうむ返しにしてから、その意味が遅れて脳に届く。まさかと思いながら覗き込むと、子どもたちの布団には確かに、小さな猫が一匹ずつ横になっていた。
オレンジ色のパジャマを来た陽太の布団には、茶虎の子猫が。海美の水色のパジャマの袖に爪を引っ掛けて眠っているのは、つやつやの黒猫だった。
「どうしたのぉ?」
「うるさぁいぃ」
顔をしかめた子どもたちが、同じ仕草で目をこする。その目が子猫の姿を捉えたとき、二人は瞠目して顔を見合わせた。
「わあ!」
「どうしよう!」
「猫の国から連れて来ちゃった!!」
子どもたちの重なった声で、子猫が目を覚ました。茶虎と黒猫はビクリと体を震わせ、見開いた目でそれぞれ陽太と海美を凝視している。
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