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「あなたまさか……闇の?」 俺の姿…黒髪で確信したらしい。 「俺は他世界の闇神だ。」 「ああ…私を助けに来てくれたのですね?」 「助け?」 女が態度を変化させた。 傲慢にも見えた態度が一転、頭を下げて穏やかになる。 「私はガネシャ。お察しの通りこの世界の闇の女神です。私は元神候補の一人でした。私達候補は互いに力を使い、この世界を守って来ました。」 候補とはリタリア達の事だな。 最初は協力していたのか。 「そんなある日、私だけが使った力が戻らず、疲弊の一途を辿り出したのです。辛く苦しかった……それでも私は役目を遂げる為に力を使い続けました。」 「よく消えなかったな。」 「はい。私は限界を迎え…消えると思っていました。だけど私は、自分の意思では無く、いつしか他の候補や生物からエネルギーを奪っていたのです。…それはとても気持ちよかった。やがて自分の意思でエネルギーを奪うようになっていったのです。」 俺は話を聞きながら、俺が打てる最善の手を考える。 候補の中で、ガネシャだけ力が回復しないのは何故か。 「私はもう私を止められません。もう、消えるか、この世界が滅ぶまで吸い付くすしか無いのです。」 「…試してみるか。」 俺はあらゆる可能性を考えた上で、この状況を打破する手を、一つだけ閃く。 「闇神様?」 「ガネシャ、何が起こるかわからないから俺が力を使う間、結界を任せる。」 「は、はい!」 ガネシャが結界を張るのを見ると、すぐに俺は詠唱を始める。 かなり複雑に神力を編み、更に俺が余り信用しない、可能性を『奇跡』に掛けるしかない。 どうやってもこればかりは俺の力ではどうしようもないからな。 しばしして詠唱は終えたが……俺の力が届いてくれないことには。 「繋がってくれ…俺の妻に!」 俺と妻の絆を俺は信じた。 やがて、俺の意を組んでくれたのだろう妻が、会話はどちらからも出来ないようだが、光の力を送ってくれた。 俺が受け取った光を地に置くと、光は一人の姿になる。 「こ、これは…?」 ガネシャが、この世界の光神となった光に触れる。 「この世界には光の力が無かった。光と闇は表裏一体だ。だから闇のガネシャだけでは回復出来なかった。」 リタリア達はそれぞれ回復してくれる属性の相手が居た。 「では、私はもう生物を食い尽くさないで済むのですか?」 「俺が帰れそうだから、どうやら正解だったみたいだな。」 今ならば妻の気配を辿って帰れそうだが。 そうでなくても妻は、俺のために帰る道が途切れないように繋いでくれているに違いない。 それに俺の行動が正解ならば、俺が何もしなくても帰れる。 リタリア達が現れた。 正常に戻ったガネシャが呼び寄せたのだろう。 六神とパーティメンバーが跪く。 パーティメンバーも事情を聞いた様子だ。 「私達が必ずこの後処理はしてあげるから…たまにはこっちの世界にも来なさいよね!」 クララはあくまでもツンデレを貫くらしい。 「ああ、俺の名前は一切出ないように頼む。」 「任せてください!」 ロジャーはどうにか怪我は治ったようで元気だ。 「あの……闇神様、私はどうすれば…。神官の娘なのに、神が全く見えなかったのです…。」 ダリアがおずおず訊ねる。 そういえばそうだった。 そもそもこの世界に神が居なかったのだから仕方ないとは思う。 「今居る六神を信仰すればいい。最初だけガネシャ、手助けしてやってくれ。」 ガネシャの事は見えているのだから、きっかけさえ与えれば見えるだろう。 「ああっ!見える、見えます!」 ガネシャがダリアに力を貸すと、リタリア達の姿が見えるようになったらしい。 その時、俺の足許に複雑な記号の羅列が生じる。 それが発光しだしたので、漸く帰れると安心でいっぱいだ。 26時間……妻と離れていた時間、禁断症状が出そうだ。 一人旅だったから、元の世界に帰りたいために急ぐは、余り冷静で居られなかったはでバタバタしてしまったが、チート異世界転生で俺だけTUEEEは一度は憧れる。 ほんの少しだけだが経験出来たのは良かった…のか? でも……それより何より妻の傍が一番だと、俺の世界に戻った俺は、急いで妻の元へと向かった。
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