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降りかかる火の粉に澪は目を閉じる。
口許を手で覆い、息を止めていた。
もう限界だ! と思ったとき、頬に冷たい風が当たった。
身体にまとわりつくような木が焼ける匂いも熱気ももうない。
目を開けてみると、建物からはかなり離れていた。
「片桐少尉っ、ご無事でしたかっ」
何人かの兵士たちが男に駆け寄ってきた。
男は澪を下ろし、彼らと話しはじめる。
地面に足をつけた瞬間、揺れた澪の制服のブレザーのポケットでカサリと音がした。
見覚えのない四つ折りにされたルーズリーフがそこに入っていた。
広げると、柊のものらしき字が見えた。
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