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午後八時、満月。
高校の学園祭のあと、澪たちはまだ帰らずにグラウンドにたまっていた。
打ち上げと称して、肝試しをすることになったのだ。
先生たちはまだ残っているようで、一階の職員室にだけ、灯りがともっている。
「先生たちには気づかれんなよ」
俊夫がそちらをうかがいながら、声を落として、そう言うと、肌寒いのにセーラー服の袖を腕まくりしている真智子が眉をひそめて言った。
「でもさー、そもそも、うちの学校ってユーレイ、出る?」
あ、とショートカットの亜衣がポンと手を打つ。
「そういえば、坂田くんのおじいちゃんが、満月の夜、校舎の中を軍人さんが行進してるの見たって言ってたよ」
それを聞いた宏哉が、いや、待て待て、と口を挟んできた。
「なんで、坂田のじいさんに見えんだよ。
あのナマグサ坊主、絶対、霊なんて見えてないって。
な、柊」
彼が澪の幼なじみ、柊にそう訊いたのにはわけがある。
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