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「俺はお前と初めて会ったとき、自分の前世をぼんやりとだが、思い出していた。
兵舎が爆撃された日、炎の中から助け出した、名前以外記憶を持たない娘と結婚し、戦争から平和な時代へと生きた記憶を。
だが、お前の方はいつまで経ってもその前世を思い出さず、俺はイラついていた。
だけど、あるとき、思い当たったんだ。
俺だけがその前世を思い出し、お前は思い出さない理由。
炎の中から助けた娘と結婚したその記憶。
俺にとっては過去だが、お前にとっては未来のものなのではないかと」
柊が自分を突き落とす直前にささやいた言葉を澪は思い出していた。
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