七不思議 満月ノ夜ニ――

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「お前を無理やり引き止めることもできたのかもしれない。  だが、そうしたら、今、俺たちが出会っているこの未来もなくなる気がした。  それに、前世の俺はお前の存在にずいぶんと助けられていた。  そのときの記憶は大切な思い出として、今も俺の中にあるから」  覚悟を決めたような顔で自分を階段下に突き飛ばした柊を思い出す。 「澪。  幸せに――。  いや、お前が幸せになるのは知ってるけどな。  俺はまた、お前が生まれ変わってくるのを待っているよ。  俺がジジイになってても、必ず、また惚れろよ。  お前のことは新しい学園七不思議として残しておいてやるからな。  満月の夜。  サイレンが鳴って、現れた軍人さんに女生徒が連れ去られたって。  少しずつ変貌しながら。  でも、都市伝説みたいに、その七不思議はいつまでも残ることだろう――。                柊」  どんな終わり方……。  淡々としたその感じが、柊らしくて笑ってしまう。  笑ってしまうのに、涙が出た。
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