塩パンは涙の味

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 一口食べると、パンの食感を噛みながら感じ、もう一口食べると、溶けたバターの塩味が口に広がり、頬を伝って口の中に入った涙の味に似ていた。  一緒に泣いて、慰めてくれている――  表面は焼かれて固くなっても、中のバターのところだけは柔らかく残っている。  甘いパンでは慰めにならなかった。  塩パンは涙の味。
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