ニョロ

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ニョロ

 オレの名前は『みたらし』。  二歳の柴犬だ。  今日の散歩は農道コースだ。  水の張られた田んぼを横目に見ながら、オレは軽やかに歩く。  と、オレは、道端に黒くて細くて長いモノが転がっていることに気付いた。  これは……『ニョロ』だ。  ワン!  パパさんに警告するも、汚れたホースとでも思ったのか、チラリと一瞥だけして、横を通り過ぎようとした。  その時だ。  ニョロっ。  動いた!  パパさんは、絶叫しながら走り出した。  オレは引っ張られながらも、遅れまいとして走った。  いやー、走った走った。  パパさん、久しぶりの全力疾走だ。  ようやく自宅に帰り着いたときには、パパさんはすっかり汗だくになっていた。  あいつは『ニョロ』。  パパさんを全力疾走させる、謎の生き物だ。  パパさんを運動させるには、もってこいのアイテムだ。  ただ、欠点が一つ。  ニョロが出没すると、しばらくそこは、散歩コースから外れてしまう。  あの道、好きなんだけどなぁ。  どんまい、パパさん。  そして今日も日が暮れる。
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