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ドッグフード
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
……何これ。
オレは愛用の、餌入れに使用している鍋を覗き込む。
いつものカリカリに混じって、他のカリカリが入っている。
食べたことのない、新しいカリカリだ。
だが、臭いを嗅ぐ限り、実にマズそうだ。
オレはパパさんを見上げた。
ニコニコ笑っている。
……食べろと?
パパさんが奥に引っ込むのを見送ってから、オレは鍋に顔を突っ込んだ。
鼻先で新しいカリカリを鍋の外に弾き飛ばしながら、いつものカリカリだけを食べる。
器用だって?
まぁな。
わけないぜ。
戻ってきたパパさんが、慌てて外にこぼれ落ちた新しいヤツを拾い集め、またオレの鍋に入れた。
あぁあぁ、なんてことしやがる。
せっかく取り分けたのに。
パパさんは、ブツブツ言いながらまた奥に引っ込んだ。
オレは食事を再開した。
もちろん、新しいカリカリは、一粒残らず弾き飛ばしてやったがな。
再び戻ってきたパパさんは、ガックリ肩を落としてその場に立ち尽くした。
大袋で買ったのに、だって。
どんまい、パパさん。
そして今日も日が暮れる。
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