雨の日の散歩

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雨の日の散歩

 オレの名前は『みたらし』。  二歳の柴犬だ。  雨が降っている。  パパさんがオレの前にそっとペットシートが敷かれたトレイを置く。  何これ。  この上で用を足せと?  どうやらパパさんは、この雨の中、出かけるのが嫌らしい。  だが残念、そんなものの上でトイレなんか絶対しないぜ。  オレはリードを咥え、パパさんの前に置いた。  テコでも動かないオレを見て根負けしたパパさんが、お出かけの用意をし始める。  よし、散歩だ!  なぜだか、今日はどうにもトイレの場所が決まらない。  よし。もうちょっと歩こう。  パパさんがウンザリ顔でついてくる。  さっきからパパさんずっと、早く帰ろう、って言ってる。  いやいや、待て待て、トイレの場所が決まらないんだ。  もうちょっと付き合ってくれよ。  帰宅したとき、パパさんは、びしょ濡れになっていた。  濡れた服を脱ぎながら、深いため息をついている。  どんまい、パパさん。  そして今日も日が暮れる。
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