おまけ 脚本家と御曹司の夜

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「何もこんな原稿に追われてる時に切り出さなくてもいいのに」 「深雪ってスイッチ切れると結構ポンコツだからさ、深雪の頭が働いてる時に話したかった」 「それは……」  貴博さんの言う通りかもしれない。 「なんかごめんね」 「いや、俺の方こそいつも急でごめん」  私を抱きしめる彼の腕に、ギュッと力がこもる。 「でも結婚して生活環境が変わっても、俺みたいなパトロンができて変なプレッシャーがかかっても、パソコン壊しそうな勢いで執筆してるから安心した」  だからぼちぼち子供の話もできる気がしたらしい。 「脚本に関しては学生の頃からもう十年以上? 舞台立て続けてるからね。結局は何があってもやめられないんだと思う」  といってたいした実績や名声があるわけでもなし、プレッシャーなど感じる必要もなく次の作品にのめり込んでいるだけなのだが、傍から見れば私も強心臓だったりするのだろうか。 「終わったらしような」 「うん?」  貴博さんが抱擁を解き、私の頭をポンポンする。ちらりとしか見えなかったが、彼は極上の笑顔を浮かべていたように思う。 「今夜って意味なら期待しないでね。実際のところ締切は結構やばいから」 「ここは照れないのかよ。本当にオンオフで反応変わるよな」
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