中途採用の新入社員

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 エレベーターで一階に着くとエントランスの正面に綺麗なお姉さんたちが三人。カウンター越しに外から来るものたちを丁寧に迎えてくれる。  普通だったら彼女たちのような超一流の上玉に男たちは夢中になるのだろう。残念ながら僕は全く興味がないけれど。  彼女たちがまたいつものように僕に色目を使ってきたって、僕にはなんの役にも立たないんだってことを彼女たちは知らない。 「お疲れ様です。三時から打ち合わせのアポイントをとってます、あさひコーポレーションの香田です。真壁専務に取り次ぎをお願いします。」  いつものようにそう声をかけると目をキラキラさせて頬を染めながら一人の女性が対応した。 「お待ちください」  受話器を取って誰かと連絡を取り合ってる。  インフォメーションカウンターの脇によけて待っているとさっきの女性がやってきた。 「お待たせして申し訳ありません、ただいま打ち合わせ中でして。約束のお時間に少し遅れるとのことです。あちらのフリースペースにてお待ちくださいとのことです。ご案内致します…」  その女性が向こうのテーブルや椅子の並んだフリースペースに僕らを案内した。チラチラとこっちを盗み見ては変な愛想を振り撒いてくる。  彼女の後ろから着いていくとそのすぐ後ろをヒビキも早歩きで着いてきた。 「あちらのドリンクコーナーをどうぞご利用ください。セルフサービスになっております。」 「ありがと」  そう声をかけるとはにかんだ笑顔でまたほほをピンクに染めて去っていった。 「やっぱり女性には興味無いんですね。いつもみたいに声かけないし、名前すら聞かないんだ…。あんなに美人なのに。」  ヒビキが向こうのドリンクコーナーからホットコーヒーを二つ持って来てくれて僕の隣に腰かけながらそう呟いた。 「別にあの人に用は無いから…♪」 「一般的にはすごく美人だし、見るからに向こうは香田さんに気があるみたいだった」 「僕は興味ないね…。君こそどうなの?」 「僕ですか?僕も別にタイプじゃないです…。」 「ほらな。人の事言えないじゃん。ヒビキこそ、お前はどんなのがタイプなの?」 「僕は仕事が恋人ですから。」 「フフ。昔の僕みたいな事言ってる…」 「香田さんと一緒にしないでください…」
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