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自由な空
朝、夜明けと共に聴こえてきた小鳥たちの囀ずる声で目が覚めた。
まだ少し眠い目を擦りながらカーテンを開けると、外の電線に小さな小鳥たちがとまって毛繕いをしていた。
近所の家の庭の大きな木にも小鳥たちがやってきて羽を休めている。
賑やかにおしゃべりしてるその声は互いを呼び合ってるような気がした。
今の僕たちみたいに。
しょっちゅう言いたいことを言い合う僕たちみたいに。
今までそんなやつは僕の周りにいなかった。なんて口うるさくて生意気なやつなんだ、そう思いながらも、実はそれが楽しくて仕方ない。
だから今日みたいに、あいつがいない朝は、なんか忘れ物でもしたみたいな気がして仕方ない。隣に寝ている筈のあいつのいない朝は目が覚めるとベットが冷たく感じる。
時々仕事でヒビキに出張に行かれてしまうと、僕の家は急に広くなったようになる。あの口うるさいヒビキがいない日は静かすぎて耳鳴りがしてきそうだ。
そんな日は窓を開け空を飛び回る鳥たちを見上げる。そして思うんだ。
お前たちはいつも自由に飛び回れていいな、って。僕も羽があったら今すぐに飛んでいきたい。あいつの元に…。
同じ方向に向かって寄り添うように空を自由に飛びまわってるのを見ていつもそれを羨ましく思っていた。
今日みたいなそんな日は、鳥たちにこういってやるんだ。
僕も見つけたよ。やっと、一緒に同じ方向を向いて寄り添いながら飛んでくれる相手が見つかったよって。
僕は自分を閉じ込めていたその籠の中からついに飛び立った。
もう、籠の中の鳥なんかじゃない。
言いたいことをはっきり言うあいつのお陰で、僕も少しずつ変わり始めている。
あんなに苦手だった百獣の王の様な父にも、言い返すようになった。
あんなにコンプレックスを抱いていた兄に引け目を感じていたはずの僕が、兄の存在なんか気にならなくなってきた。
比較されてるなんて気にしていたのは僕の単なる劣等感から来るものだったと最近気づいた。
兄も父も、僕が思うほど強い人間なんかじゃなかった。兄は副社長の職を解かれてからすっかりおとなしくなった。父はあれ以来、僕やヒビキをすごく頼りにしてくる。
あんなにいつも僕に口を出してきた母は、自分よりも口うるさい響を見ているうちに、僕にはなにも言わなくなっていた。響には敵わないと思ったのか、それとも反面教師か…。
そんな彼らから解放された僕は今、自由に僕の人生を謳歌している。響と寄り添いながら。
僕がゲイであることはとっくに昔からみんな気づいてた。
響が僕のパートナーになったことを彼らは別に反対しなかった。それどころか、幸せそうにしていることにやっと、ほっとしたと言っていることに驚いた。そんな風に思われてたなんておも思いもしなかった。
僕は僕が思っていた以上に、実は家族からこんなに愛されていたんだってことを知った。それは多分、あいつのお陰だ。響が僕に教えてくれた。
愛について僕自身がちゃんと向き合ってこなかっただけで、そこにちゃんと最初から愛はあったんだってことを教えられたから。
最近じゃ、ヒビキは会社の主戦力のなっているから、父も兄もヒビキには頭が上がらない。僕はそんなあいつが誇らしい。
それに。
最近のあいつは前にもましてカッコいい。すぐそばにいる僕が毎日見てるのに見飽きないくらい、ヒビキはいつも輝いていて、思わず目を奪われる。
気がつくと目で追ってる自分に気づくんだ。
目が合うだけでドキドキするし、あの憎たらしい生意気な口でなんか言ってくる度に、そのうるさいけど愛おしい口を僕の唇で塞いでやりたくなる。
早く僕たちのうちに帰って、早くあいつと…。なんて。
そんなことを考えながら今日も僕はオフィスの大きな窓から青い空を見上げる。
外で自由に空を飛び回る鳥たちに今日もそっと微笑み掛けながら…。
おしまい
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