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拾い物
ラビリンスから帰る途中、またあの路地裏を通りすぎ、あの場所が目に入った。
そういえばしばらく忘れていたけれど。
あの時のことが目の前によみがえってきた。
懐かしい変わらない古びた路地を通りかかると、時々ふと思い出すあの何年も前のちょっとした出来事をまた思い出していた。
地べたにうずくまる捨てられたボロ雑巾みたいな泥酔した男の子。
ここであの夜、僕は子犬のような目をしたその子を拾った。
あの子は今ごろ…どうしてるだろう。
あの子を見つけたあの懐かしい路地の前をまた通りかかったから思い出したのかな…。
あの夜、なんであの子はあそこにいたんだろうか。
こんな街はあんな子が来るようなところじゃない。まだ未成年だったはずの大人になりきれてないあの子がああして泥酔してぼろ雑巾のように転がってたっけ。
少し長めの髪の毛は中性的な雰囲気をさらに強くしていたし、透き通るような白い肌は暗闇でも光を跳ね返すほど艶めいていた。
いくらボロ雑巾みたいに薄汚れていたってあの子はやっぱり美しいと思ったことだけは思い出すのに。
だけどその顔だけがどういうわけか霞がかかったかのようによく思い出せない…。
なんでだろ。
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