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中途採用の新入社員
「今日からお世話になります。
町田響ともうします。」
「マチダヒビキ。ヒビキか。
いい名前だな…。」
「よろしくお願いします。」
きっとスマートで知的で、見た目とその名前通りの美しい人なんだろう。
履歴書に初めて目を通した時、写真の印象からそんなイメージを持っていた。
顔は僕の好きな顔だ。
響がうちの会社に入ってきたのはつい先月のこと。
この都市開発課に配属された彼は中途採用で入ってきた。
年は僕より五つ年下の23歳だ。
僕の配下についたから直属の部下になった。
なんだか生意気で少し気が強いかんじだ。真っ直ぐで正直そうなところがある人に重なる…。
あれ?この顔、どこかで会ったかな。
なんて、気のせいか…。
まあ、よくある?こともないか…。
イケメンの部類に入る好青年だ。
スーツがとてもよく似合ってる。
爽やかそうな真っ直ぐな印象。
だけどその性格は最悪だった…。
なんでこんなやつが入ってこれたんだ。人事はこいつのどこをみているんだ。
見た目は確かにスマートで、仕事だって出来そうだし、顔も仕草も綺麗。誰がみてもきっとみんな口を揃えてこう言うだろう。美男子って。
最初は僕だってそう思った。
だから、いつものように声をかけた。
「君、いい顔してるね。名前なんだったっけ…♪」
「町田響と申します…」
「ヒビキか…。よろしくねヒビキ♪」
そうしたら。
「いきなり下の名前で呼び捨てですか?」
「ん?」
「入って早々、随分馴れ馴れしくするんですね…」
「え?気を悪くしたんなら謝るよ」
「そんなことを言ってるんじゃ無いんです。どうするんですか?俺が悪いやつだったら」
「え?」
「そうやってすぐ距離を縮めていいんですか?」
「いや、挨拶しただけだし♪」
「そうやって馴れ馴れしく下の名前で呼ばれたら、その気になって、勘違いする人だっているでしょう…。俺に気があるのかなって」
「僕だって嫌なやつには近寄らないよ…」
「でも、そうやって近づいた俺がもし悪いやつだったらどうするんですか?」
「君は悪いやつじゃないだろ?悪いやつは言わないよ。自分が悪いやつだって…」
「そうですか…」
「……」
なんだ、あいつ。
いきなり説教か。変なやつ。
あいつとはそんな感じで始まった。
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