中途採用の新入社員

1/10
76人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ

中途採用の新入社員

「今日からお世話になります。 町田響ともうします。」 「マチダヒビキ。ヒビキか。 いい名前だな…。」 「よろしくお願いします。」  きっとスマートで知的で、見た目とその名前通りの美しい人なんだろう。    履歴書に初めて目を通した時、写真の印象からそんなイメージを持っていた。  顔は僕の好きな顔だ。  響がうちの会社に入ってきたのはつい先月のこと。  この都市開発課に配属された彼は中途採用で入ってきた。  年は僕より五つ年下の23歳だ。  僕の配下についたから直属の部下になった。  なんだか生意気で少し気が強いかんじだ。真っ直ぐで正直そうなところがある人に重なる…。  あれ?この顔、どこかで会ったかな。  なんて、気のせいか…。  まあ、よくある?こともないか…。  イケメンの部類に入る好青年だ。  スーツがとてもよく似合ってる。  爽やかそうな真っ直ぐな印象。  だけどその性格は最悪だった…。  なんでこんなやつが入ってこれたんだ。人事はこいつのどこをみているんだ。  見た目は確かにスマートで、仕事だって出来そうだし、顔も仕草も綺麗。誰がみてもきっとみんな口を揃えてこう言うだろう。美男子って。  最初は僕だってそう思った。  だから、いつものように声をかけた。 「君、いい顔してるね。名前なんだったっけ…♪」 「町田響と申します…」 「ヒビキか…。よろしくねヒビキ♪」  そうしたら。 「いきなり下の名前で呼び捨てですか?」 「ん?」 「入って早々、随分馴れ馴れしくするんですね…」 「え?気を悪くしたんなら謝るよ」 「そんなことを言ってるんじゃ無いんです。どうするんですか?俺が悪いやつだったら」 「え?」 「そうやってすぐ距離を縮めていいんですか?」 「いや、挨拶しただけだし♪」 「そうやって馴れ馴れしく下の名前で呼ばれたら、その気になって、勘違いする人だっているでしょう…。俺に気があるのかなって」 「僕だって嫌なやつには近寄らないよ…」 「でも、そうやって近づいた俺がもし悪いやつだったらどうするんですか?」 「君は悪いやつじゃないだろ?悪いやつは言わないよ。自分が悪いやつだって…」 「そうですか…」 「……」  なんだ、あいつ。  いきなり説教か。変なやつ。  あいつとはそんな感じで始まった。  
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!