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朝から引っ切り無しに鳴り止まないオフィスの電話の対応に追われながら、合間に一息付いたタイミングで、オフィスの扉が開き、あの二人が入ってきた。
手元のコーヒーに口を付け、一つ深呼吸をしてそちらに目をやる。
今日もいつも通り二人で仲良く同伴出勤かよ…。
二人仲睦まじく寄り添って朝から同伴出勤する姿を横目でチラリと見ている俺の心は重い。
あんな風に朝から目の前でいちゃついて。
これで付き合ってないって言うんだから。
身体だけのパートナーなんだって言うんだから。今朝の香田さんは俺に見向きもしない。
昨日は僕に泣きついて来たくせに…。
昨日のあれはなんだったんだよ。なんて勝手に俺だけ思ってる。
昨日も香田さんは彌生さんじゃなくて椎名さんと過ごした。
香田さんのパートナーの彌生さん…。
その事について何も思わないのかな…。
例えば。
嫉妬心とか、無いのかな…。なんて。
土曜日は毎週のように彌生さんと過ごすっていってたから…。
普段はわりとサッパリしていて、あまり会社では香田さんといちゃついたりしない。だからあからさまにやきもちを妬いた姿なんか見せない。
香田さんを束縛もしないし、なんなら香田さんのことをほったらかしにしているようにさえ見える。
どっちかって言うと、椎名さんの方が黙って甲斐甲斐しく付き人みたいにそばにいて世話をしてるイメージだ。
彌生さんは普段からクールだし、見た目は香田さんと男同士仲のいい親友みたいな立ち回りと雰囲気だ。
二人の会話もいつもサッパリしてるし、香田さんに対してしつこくしない。向こうが求めてくれば軽く相手をするけど、必要ないときはケロッとして去っていく、そんな印象だ。
そんな彌生さんはいつも土曜の夜に香田さんのマンションを訪れて二人で過ごしている。もうそれが何年も続いている。
酔って香田さんが俺にそんな話までペラペラと話していたことを思い出す。
昨日はあのあと椎名さんと過ごしたから彌生さんはお役御免だったんだろう…。
営業部で営業をしている彌生さんはしょっちゅう勤務時間内に香田さんのところにフラッとやって来ては他愛の無い話をして、土曜日の約束なんかをして帰っていく。
部下の僕がそばにいても一向にお構い無しだ。だから嫌でもそんな関係の二人の日常を垣間見ることになる。
当初はそんな二人の会話を聞いてはいけないような気がして、聞こえないふりをしていたけれど、最近ではそうすることもしなくなった。
どうやらお互いに二人の関係を隠しているようでもなさそうだ。
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