隠れた想い(響side)

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隠れた想い(響side)

 あんな風に手当たり次第あんなことしてるけど、あの人には今でもずっと思い続けてる人がいるのを知ってる。  多分あの、専務の碧斗さんとの未来は無いって解ってる。今さらそれをどうこうしようなんて事は望んではいないみたいだ。  香田さんのことを好きな彌生さんや椎名さんをそばに置いてああしていつも一緒にいながら、あの人は多分、ずっと孤独だ。  彼らと本気で向き合う気なんか多分ない。    椎名さんは香田さんのこと何でも理解してるし唯一香田さんが弱みを見せて心を許してる。  だから何かあった寂しい日は、決まってこの椎名さんを呼び出す。  だけど二人はそんな時の身体だけの関係。  彌生さんとは本当にそう言うことを定期的にするのを楽しむための身体だけのパートナーの関係。  香田さんがそんな二人から大事にされてるって言うことは目に見えて解る。だけどどう見ても香田さんの方はそばにいるくせに、その心の全ては二人にさらけ出していない。俺にはわかる。    前から気づいていた。香田さんがこの二人以外にも複数の取り巻く男たちと随分前から身体の関係を持っていると言うこと。  どうやらそれは本当みたいだ。目の前でそれを見た訳じゃないけれど。状況から見ると多分それはそうなんだろう。  だけど。  時々ふと、寂しい顔をしてるのをみかける。  ああやって大人ぶって俺にはあんな風に説教をたれてくるけど。  俺にはやたらと口だしてきて説教してくるけど。そのくせ自分のことはあんなだ。  最近では俺に甘えたようなそぶりを見せるようになってきた。昨日はあんなに酔って愚痴を溢したりして。  あんな風に俺に身の上話なんかしてきたりして。  あんな脆くて崩れそうな香田さんを見ていたら自然と涙がでてきた。  なんだよ、もっといつもみたいに憎たらしい顔で言いたい放題言ってる香田さんでいてくれたらいいのに。  あんな弱ったところを見せられたら……。  俺……。全部言っちゃいそうだ。  ずっとこの胸のなかに隠してきたものをさらけ出してしまいそうだ。  ___俺は昔のことを今でもずっと隠している。あの時あの場所で言われた言葉を大事にしている…  ___目の前にいる今でも忘れられない人への想いを隠している。  ずっとあの日のことがどうしても忘れられなかった。  だって…。  あんなこと言われたらさ…。 『こういうことは好きな人とするためにとっておくもんだ。』なんて。  あの時の俺はしたかったんだ、あんたにキスをさ…。  だけどあの時もあんたは俺を子供扱いした。  多分、あの瞬間、あんたに一目惚れだったのに。  
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