隠れた想い(響side)

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 俺もなっちゃおうか、香田さんの取り巻きの中の一人に…。  香田さんの欲を晴らすための身体の相手の一人に。  それで?そうなったら俺は満足するのかな…。  いや、絶対俺はそうじゃない。きっと、あの人を俺だけのものにしたくなる。だけどあの人は俺の思いどおりになんかならないってわかってる。  そんな辛い思いをするくらいなら、そんなまやかしの悦びなんか、最初から知らない方がいい…。    なら、なんでここに来た?  俺はなんで今ここにいるんだ?  あの人を手に入れるためにここに来たんじゃなかったのか?  あの人をずっと探してた。見つけた時は嬉しかったっけ。ラビリンスであの人を見つけた。あの人の職場もわかった。中途採用の募集に飛び付いた。  そして今、俺はこうしてあの人の側にいる…。  だけど結局、何も思いどおりにはならない。  怖くて勇気が出ない。 『僕に本気になるなよ…』  その言葉がずっと今も聞こえてる。  __俺は何をしたい?  何度思い起こしてもやっぱり俺の答えは変わらなかった。  あの人を振り向かせられたらいいのに。  あんたはあの時、俺にあんなカッコいいことを言ったくせにさ。  こんな風に自分を雑にあつかったりして。こんな風に手当たり次第男に手を出すなんて…。  俺にはカッコつけてまともな大人の顔してあんな風に言ったくせに。  俺にはあんな風に言ったくせに、自分はどうなんだよ…。  あの日のあの人は俺にとって神様みたいな存在だった。  俺を拾ってくれたあの人が俺に施してくれた優しさで俺は救われた。  あの日あんたに会わなかったら、俺はあのまま俺の人生を終わりにしていた。あの時、一目惚れしたあんたが俺を引き留めてくれた…。あんたのお陰で生きる目的ができた。  ちゃんと立派な大人になってもう一度あんたと…。  なのに俺が大人になって再会したあの人は、大事な人とするためにそんなことは取っておくはずの人が。  店の外で酔っぱらって下らないやつと道端でふしだらなことをしていた。  暗闇のなか壁に寄りかかってる相手にその手を伸ばして服の上からソレをまさぐり相手を悦ばせていた。何度も激しくキスを浴びせながら…。
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