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そんなある日、外から飛び込みで営業に来た男が僕のタイプだったから、いつものように声をかけた。お気に入りの子といつもみたいに話をしてたら、ヒビキがそばにやって来た。
「こんなところでなにやってるんですか?」
「なにって?みての通り、このイケメン君と話してるんだけど?」
するとヒビキはその営業マンに向かって話しかけた。
「あなたは下の名前で呼ばれましたか?」
彼に唐突にそんなことを聞いている。
「あ?あぁ、呼ばれたけど…?」
「あなたは男性を恋愛対象としてみていますか?」
「は?なんだよ、いきなり」
「どうなんですか?」
「んな訳無いだろ。お前、唐突にキモいこと言うなよ…」
「ですよね?さっき下で受付の女の子に声をかけてましたもんね。今度ご飯行きましょうって。今だってすれ違う女性社員を品定めしてる。」
「なんなんだよ、お前」
「ご飯に行ってその後どうする予定ですか?ご飯だけで本当に終わりですか?」
「そんなの、お前に関係なくね?」
「ほら、聞きましたか?香田さん。」
「あー。もう、行こう。町田くん。君、またね…」
別にこの彼をどうこうするつもりなんかなかった。好みの顔だったから声かけただけだ。脈ありそうなら誘おうと思って様子をみてたけど、彼にその気がないことくらい、僕にだってすぐにわかった。
だって横を通りすぎる女の子たちをしきりにチェックしてたから。
「あんな営業マンはダメです。」
「ふふふ。解ってるよ、僕だって仕事の相手には選ばない。」
「無駄です。そんな彼なんかに声かけたって」
「なんなんだよ。なんでわざわざ口出してきた?」
「無駄だって知ってたから。」
「余計なお世話だな…」
「無駄なことしなくていいでしょう。意味のないことをするのは時間の無駄です…」
こいつのことがよくわからない。
何がしたいんだか…。
とにかく堅物で融通がきかない頭でっかちなやつみたいだ。
その日の夕方。
「そうだ、一緒に夕飯でも食べて帰ろうか。」
普段の感じでなんとなく今日はヒビキを夕飯に誘った。
いつものように別に深い意味はない。みんなにするようにしただけ…。
「何でですか?」
「え?何でって、夕飯食べるのに理由なんか必要?」
「でも、俺と香田さんが食事をするのには、なにか特別な意味があるんでしょ?」
「そんなのないよ。別に。
ただ君と話しながらご飯でもと思っただけだよ。強いて言うなら、お互いの理解を深めるため、かな…。」
「そうでしたか。まあ。じゃあせっかくなんでありがたく御馳走になります。」
それなら最初から素直にハイって、そう言えよ…。なんてね。
まあ、いい。一緒に行くのが嫌だとか言い出すのかとおもいきや。
どうやらそんな訳でも無さそうだ。
僕を拒んでる訳じゃないのか…。
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