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「そう言うことは好きな人とだけする時のために取っておけって。
だから…。」
「お前…。」
「俺は好きな人とその続きをするためにあれからずっと大事に取っておいた。
俺にあんな風にそう言ったくせに。
それなのにあの人は…。自分でそう言ったくせに…」
「まあ、小僧のお前にあいつのことはわからねぇだろうよ。」
「俺は好きな人としかしない。相手も俺だけを好きでいてくれる人としか」
「そうか。それがいい」
「俺もまた、時々ここに来てもいいですか?」
「ここがどんな店かわかってんだろ?お前のようなやつがくるところじゃないだろ?誰かに狙われたって知らねぇよ?」
そう言ってまたさっきの男をチラッとみた。向こうからもこっちを気にして見てる視線を感じた。
「はい。俺もそんなつもりはない。マスターとこうして時々話がしたいだけです。」
「俺は構わないさ。いつだって話なら聞いてやる。だけど、本当に知らねぇよ?こんなとこに来たらなにがあっても。お前みたいな顔を好きな男がたくさんいる…。」
「大丈夫です。もうあの時みたいな子供じゃない。もう大人ですから自分の事は自分で何とかします…。」
「そうか…」
マスターが頷きながらさっきの男の方をチラッと見ていた。
その日、見たくないものをみた。
マスターとそんな話をしてたら入り口から二人でイチャイチャしながら入ってきた。
酔って他のやつとベタベタしてる彌生さんだ。
あんなに香田さんの前では香田さんのことが好きな顔してるくせに…。
なんだよ、これ。
彌生さんのそばには随分親しげな男が寄り添っていた。その雰囲気は昨日や今日出会った間柄じゃない。
振り返って肩越しにこっそり見た。
向こうはまだ気づいてない。俺がいること。
するとカウンターに腰かけてたさっきの男がこっちを見てるのに気がついた。目が合うと片方の口許を少しだけあげて笑いかけてきた。
「マスターと話は済んだ?」
「あ…。えっと」
「よかったらこっちで一緒に飲まない?さっきの話の続きをしようぜ。俺も今日は相手を探してる」
「いや、俺は今日はそんな…。」
「いいだろ?
一人ならさぁ。な、一杯だけ付き合えよ。」
立ち上がってそいつが俺にまた近づいてこようとした。
「ガクさん、こいつは勘弁してやってくれよ。今日は俺に会いに来てる…。」
「なんだ、もうマスターの唾つきか?」
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