彌生の敵意(響side)

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 昨日酔った俺が彌生さんとラビリンスで顔を合わせ、話をしたのはちゃんと覚えてる。   彌生さんとなんとなく言い合いしたのもうっすらと記憶にあるけど、内容まではちゃんと覚えてない。  そういえば彌生さんはこの職場で俺に初めに会った時からなんとなく敵意を向けてきた。    ラビリンスでたまたま会った時もやっぱりそんな目で俺を見てきた。  その辺りまではしっかりと覚えてる。その辺までは…。  その後すっぽりと記憶が抜けて気が付いたらいえのベットだった。 *  彌生さんは一緒にいたエリートなサラリーマン風の人とあの日、ふらっと店に入ってきた。  人目も気にせずキスしあったりしてイチャイチャして。まるでカップルだった。  それからしばらくしてから俺に気がついて寄ってきた。こっちに向かう彌生さんがいつ席に戻ってくるかって愛おしそうにそのエリートサラリーマンが時々チラチラ目配せをしてきた。 「あれ?ヒビキじゃん、おまえ、こんなとこで何してんだよ」 「俺はマスターに話があって来ただけです。彌生さんこそ、なにしてるんですか?香田さんがいるのに…。こんな人とそんな風に…」 「なんだよ、そいつ知り合い?」  サラリーマンが茶化すようにケラケラ笑い、俺の方を見ながら彌生さんやマスターに声をかけてる。 「いえ、そんなマスターとは知り合いってほどじゃないです。  それよりなんですか?この状況」 「あ?なにって?  俺なりの単なるコミュニケーションだよ。  俺たち大人はこうやって体同士でコミュニケーションとって会話するんだよ。普通のスキンシップだから。おまえにはまだ早いか」 「なんですか、それ。 そんなのおかしい。」 「こうすることがおかしいんなら、香田さんだって同じだろ?香田さんだってしてるよ。おんなじこと。」 「俺には理解できない。香田さんにはもう、そんな風にしてもらいたくない。」 「は?なんでだよ。お前何様?お前にそんな権利あるの?」 「香田さんのためです。」 「あ?」 「だって香田さんは今のままじゃ幸せじゃないから。」 「あ?なんだ?なにをさっきからほざいてる?」 「あんな香田さんの姿、ちっとも幸せじゃない。」 「なんでお前がそんなこと決めんだよ。」 「だってそうでしょう?今の香田さんは誰にたいしても本気じゃない。きっと彌生さんとだって。」 「あ?貴様、そんなこと言って何様のつもりだ?」  彌生が胸ぐらを掴んできた。 「本当はわかってますよね?彌生さんだって。  あなたもその身体は愛されてたって心は愛されてない。そんなの、本当の愛じゃない。それをご自身でもわかってる。でしょ?」
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