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「僕はね、気に入った子には自分から声かける。だけど君には声かけた覚えはないけど?」
「は?」
「だからさ。君なんかには用はない。」
「そんなこと言うなよ。いいだろ?隣で呑むくらい。お互い一人なんだし…。」
「しつこいな。」
「まあ、そんなこわい顔すんなって。
今晩の相手探してたんだろ?俺にしとけよ。良くしてやるからさぁ」
見てらんなかった。気がつくとそばに来ていた。
「おまたせ。遅くなってすいません…」
俺が香田さんに後ろからそう声をかけると2人で勢いよく振り向いた。
「なんだよ、連れがいたのか。なんだまだガキじゃねぇか…」
「あれ?響…?」
「時間ないから早く行きましょう。2人の時間がなくなっちゃう。」
「え?」
「さあ、早く出ましょう。もう、俺これ以上待てない。」
俺はそう言って香田さんの腕を引っ張った。
「あ、あぁ、そうだね♪」
立ち上がるとマスターがクスッと鼻で笑った。
「なんだよ、くそ。」
ロン毛も席をたち、舌打ちしながら残念そうな顔をして向こうの椅子に腰かけた。
店の扉を開けて外に出ながらようやく言葉を交わした。
「どうも…。お疲れ様です」
「なんだよ、なんでお前がいるんだよ。」
「え、だって香田さんがさっき電話で来いって…俺に。」
「あれ、椎名に電話したつもりがお前にかけてたのか。」
「なんですか、それ」
「フフフ。だけどさ、君も随分と面白いことするね。」
「あいつに誘われるの嫌そうだったから。余計なことしました?」
「別に助けてくれなくたって、交わしかたくらい心得てるけど?」
「迷惑でしたか?」
「いいや。ありがと。あいつは僕のタイプじゃなかったしね。でも、どういうつもり?」
「別にどういうつもりもないです。助けたかったから助けただけです。
俺のお陰であいつを追い払えた。俺がいなかったらあいつは香田さんを諦めてないはずだし」
「お前なんかに助けられなくたって…」
「さあ、いいからもう、俺と帰りましょう。あ、車じゃないけど…」
「え?じゃあ、何しにきた?ホントにお前、ここに…」
香田さんを無理矢理にでも連れて帰らせたかった。だけど酔っていた俺にはどうすることも出来ない。
俺があの時、素面だったら連れて帰れたのかな。それとも椎名さんに連絡するべきだったか…。急に酔いが回ってきた。足腰が言うことをきかない。周りの景色がふわふわとして足元がおぼつかない。
「響、お前もう帰れ。ほら、ちょうどタクシーそこに来てる」
店の外にたまたまいたタクシーに香田さんが手を上げた。
あんな状態でかなり酔ったせいで香田さんを止められなかった。
香田さんはそんな俺の目の前であのあと現れたあの綺麗な人と…。
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