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「いつもそうやっていろんな人に片っ端から声をかけてるんですか?」
「なにか問題?」
「だから。前にも言いましたけど…。」
「なに?悪い人だったらどうするのか問題?」
「はい。あなたはただでさえ、女性のような顔や雰囲気をしてる。そういうのが趣味の人だっているはずです。
あなたを狙っているような悪い輩が。」
「ははは。君みたな若いやつに、この僕が心配してもらえるなんて思いもしなかったよ。面白いね、君。」
「俺は面白くもなんともないです。」
「僕はね。もう、わかってるんだろ?
男性が好きなんだよ。だからさ。気に入った男性には挨拶する。ただそれだけだよ。
君を夕飯に誘ったのは特に深い意味はない。家に帰ってもどうせ一人だし、料理はするけどたまには夕飯くらい誰かと楽しく食べたいなって思うだけ。僕が御馳走するんだから問題ないだろ?」
「そうやって声かけて、食事だけで済むんですか?危険な目にあったこととか、無いんですか?」
「ハハハ。心配してくれなくて平気だよ。まあ、お子ちゃまの君にはちょっと理解しがたいよな。僕だってそこまでバカじゃない。」
「バカなんて言ってません。
だけどもっと、自分を大切にするべきです。」
「え?君のようなひよっこに、この僕が自分を大切にしろなんて言われる日が来るとは思わなかったよ。」
「そんな、片っ端から気に入った人に声かけて。ご飯のあとそうやって不特定多数の人と…。」
「不特定多数の人と、なに?」
「だから、その…」
「なによ。ボクがその不特定多数の人と、なにをするって?その可愛い口でちゃんと言ってごらんよ。」
「やめてください。それに可愛いなんてそうやってふざけて言わないでください。」
「へぇ。照れたりして、案外、そういうところもあるんだな。」
少しからかってやるつもりでそう言った。すると響がみるみる間に顔を真っ赤にして睨んできた。
「まあ、君には手を出したりしないから安心してよ。君みたいな青臭いお子ちゃまにまで手を出すほど困ってないからね。僕は…」
なんだ、こんな可愛い顔もするんだなコイツ…。
いつも生意気そうにあれこれ言ってくるくせに。たまにこうやって愛らしい顔されると、なんか調子狂うな。
「どうする?ご飯いく?行かない?」
「だから、行きますって!」
そう言うとヒビキはますます顔を赤くして照れて見せた。
おい、なんだよ、やっぱり可愛いじゃん。
どうやらかのヒビキは、口うるさいやつだけど、僕のことが嫌いな訳じゃ無さそうだ。
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