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「未来から、きました。」
噛みしめるようにいうと、隣でじいやが息を飲む音が聞こえた。
「それは…本当ですか?」
小さく頷いた。
「正確に言うと、未来から一番初めに会った日に飛んで、そこから今に飛んできました」
だからあの時いただいた服のままなんです、と言うとじいやも何度か頷いている。
「とても信じられない話ですが、あなた様が嘘を言っているようには見えませんし。
それに今の現状がそれを証明していますね」
「黙っていて、すみません」
「いえ、そう簡単に言える話ではないですから」
じいやはすぐに納得してくれた。
それからしばらく無言でサンドイッチを食べた。
コーヒーはかなり苦く、私は少し苦手だった。
「ヒビス様はどうして過去へとやってこられたのですか?」
その質問がくると思っていた。
「戦争を起こさせないため、です。
戦争はひどいことです。
でもそれをビジネスにして、儲かっている人も一部います。
わざと戦争を起こさせようと、未来のコンバラリヤからの刺客がメロスリア王子を殺害しました。
それからコンバラリヤとヘリアンサスとの戦争が始まりました。
国内で、ヘリアンサス人の父は殺されました。
敵国人だからという理由で。
ハーフの私も、敵国人の血が流れているとして、追われました。
必死に逃げて、逃げて」
じいやはただ黙って聞いてくれていた。
あの時を思い出すと、涙が零れそうになり、唇を噛み締めて必死にこらえた。
じいやはそっと私の背中を撫でてくれ、とうとう私の涙は決壊した。
持っていたつばの広い帽子をそっと私にかぶせ、背中をなで続けくれた。
その温かさで余計に涙が溢れた。
「辛かったですね…。
今までよく頑張りましたよ」
「…はい。」
しばらく泣いてようやく涙が収まってきた。
赤く泣きはらした目元はさぞかし不格好だろう。
気づくと隣にじいやの姿がなく、しばらくしてもどってきた。
手にはハンカチを持っており、手渡してきた。
「これで目を冷やしなさい。
せっかくの可愛らしいお顔が台無しですよ」
「ありがとうございます」
さすが王子の側近を長年勤めてきた方だ。
配慮が細やかで頭があがらない。
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