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5years old
閉じた瞼の裏に光が差し込む。
眩しさを堪えながら目を開くと、燦々と照りつける太陽が頭上に見えた。
ここは一体どこだろうか。
体の節々が痛い。
横たわっていた体を起こして、ゆっくりと周りを見回した。
どこかの森の中だろうか。
息を吸い込むと、花の香りが一気に肺の中まで広がっているような気がした。
あたり一面緑に溢れていて、ピンクや白、紫など様々な色の花が咲き乱れていた。
その上を蝶が軽やかに舞い、近くから川のせせらぎが聴こえてくる。
木陰にはうさぎやリス、小鳥の姿があり、その子どもたちはじゃれ合って遊んでいた。
自然の豊かな美しいところ。
空気も美味しい。
全ての生物が安心して生きている。
私も、今、生きている。
気がつくと、頬をあたたかいものが一筋伝っていた。
涙を流すことなんかなかったのに。
この世界はあまりにもきれいで、それでいて残酷だったから。
「…これは、私の使命だから」
服の袖で涙を拭うと、遠くの方の建物が見えるところへと歩き出した。
建物のように見えていたのは、近づくと石
造りの大きな門だった。
巨大な門は開かれており、街の人々が自由に行き来している様子が見えた。
門番も立っておらず、この世界の治安はそれだけいいのかもしれないと感じた。
立派な門は人の手で作られたのかと疑うほど、精巧な作りで、様々な形の石がパズルのように組み合わさっている。
その門をくぐると街があり、小さな広場に出た。
小さな広場で、端では物売りが二人立っているだけで、立ち止まる人はほとんどいなかった。
広場の周りを用水路が囲っており、そこを超えて石畳を少し歩くと、平屋の家々が立ち並んでいるのが見えてきた。
家の前では10歳前後の子どもたちが走り回って遊んでいる。
井戸の前では女性たちが話し込んでいる。
荷台に荷物を乗せて運ぶ人、家の修理をしている人など、様々な働いている人の姿もあった。
皆一様に輝くブロンドの髪と、オリーブ色の瞳をもっていた。
その間を歩いていると、ちらちらと視線を感じた。
きっと私がこの国の人ではない、このあたりでは珍しい外見をしているからだろう。
漆黒の髪に茶色の瞳、肌は黄みがかっており、顔のパーツも切れ長の瞳や低めの鼻。
明らかに違うため目を引くのは当然だった。
視線を感じながらも気にしないように歩いていると、急に声をかけられた。
「お姉さん、どこから来たの?」
振り返り声の主を探すと、足元から再度声が聞こえた。
「ここ、初めて?」
下を見ると、まだ5歳くらいの男の子がいた。
金髪の巻き毛の少年は、透き通るように白い肌でオリーブ色の澄んだ瞳をもった天使のような子だった。
しかし、ぷるんとした唇はチェリー色をして、子どもながらにどことなく色気のようなものをもっていた。
赤いビロードの服で全身に細かな金色の刺繍が施された明らかに高級そうな衣服を身にまとい、足元もきれいに磨かれた革靴を履いていた。
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