5years old

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しかし、大人しくついていこうとした私の肩を、じいやがぐっと押さえつけた。 「お待ち下さい。その格好で行かせることはできません。 一旦馬車にお乗りください」 有無を言わせぬ口調で言われて、近くに止めてあった馬車に乗り込んだ。 白い馬車には泥一つついておらず、全体に金の装飾が施されており、素人目に見てもかなりの職人が手掛けたもののようだった。 馬もとても毛並みがよく艶もあり、しっかり手入れされていることが伺えた。 中はビロードの椅子になっており、大きなカバンが一つ置かれていた。 そのあとからメロスリア王子、じいやが乗り込んできて、車体が揺れた。 「ヒビス、怪我してるから治さなきゃってじいやが。 ぼく、とっておきの魔法知ってるよ! いたいのいたいの、とんでけ〜!」 子どもらしい言葉に思わず笑みが溢れた。 それで痛みがなくなることはないけれど、つい昨日までの殺伐とした生活で失われていた温かさに触れて、気がつくと涙が出ていた。 「え!いたいの!? 効かなかったのかな? いたいのいたいの、とんでけ〜!とんでけ〜!」 私が泣いている様子を見た王子は、再び魔法をかけてくれる。 温かなその魔法は、私の心を徐々に溶かしていく。 「ううん、ありがとうございます。 すっかり痛くなくなりました」 「じゃあなんで泣いてるの?」 「王子の魔法が、とっても優しかったからです。 ありがとうございます」 王子は照れたように笑い、私の隣に腰掛けた。 じいやは何も言わず、かばんから取り出した道具で応急処置を手際よく済ませてくれた。 「本当にありがとうございます」 「お礼は王子に言ってください。 私は王子のお手伝いをしてさしあげただけのこと。 最後にこの服に着替えてください」 そう言うと、じいやは一着のワンピースを私に手渡して、王子と一緒に馬車を出ていった。 私は久しく見ていないほど綺麗なドレス。 一人になり、もったいないなと思いながらも、急いで着替えようと服を脱いだ。
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