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若草色のワンピースに着替えて、馬車を降りた。
メロスリア王子は駆け寄ってきて、「きれいだね!」と大人顔負けの褒め言葉を、かわいい顔で放ってきた。
あまりの可愛さに一瞬言葉がでなくなったが、なんとか「ありがとう」とだけ伝えた。
そのまま王子は手を握ってきて、再び歩き出した。
街中を歩いていると、通りかかる人々はメロスリア王子に笑顔で手を振っている。
それに対してメロスリア王子も笑顔で返している。
可愛らしい外見に加えて愛嬌もあり、国民に愛されているのが伝わってきた。
それを見ながら歩いていると、一人の30代くらいの女性が駆け寄ってきた。
「王子、これをお持ち帰りくださいませ!
今日一採れた鶏の卵です!」
女性の手にはかごが抱えられており、その中には5つの卵が転がっていた。
「おお!大きな卵だね!」
「はい!」
王子は卵を見て目を輝かせて、それを見た女性は笑顔を綻ばせている。
「ありがとう。
お姉さん、お名前は?」
「ユリスと申します」
「ユリス、この卵を産んだ鶏に会わせてくれ」
「は、はい。かしこまりました」
急なお願いに疑問を持ちながらも、鶏小屋へと案内するユリス。
「こちらにございます」
「おお!元気な鶏たちだ」
檻の中には、真っ白な鶏が数羽走り回っていた。
王子は柵に近寄り、しゃがみ込んだ。
「王子!指を入れてはなりませぬぞ!」
じいやが慌てて後を追う。
「そんなことはせぬ」
メロスリア王子はじっと鶏の方を見つめた。
先ほどまで走り回っていた鶏たちも、眼の前に現れた王子の方を立ち止まって見つめている。
「にわとりたち、産んでくれた卵もらっていくよ。
ありがとう」
そう言って王子は手を合わせた。
その姿は成長した王子の姿をぴったり重なった。
メロスリア王子はあくまで『王子』。
小さい頃から、国を背負っていて、王子として生きている。
見た目は子どもでも、中身は大人にならなければいけなかった。
小さい頃から王子としての教育はもちろん、王様が一番に言っていたのが「人に優しくありなさい」。
国でのスローガンのようになっているその言葉を大事にして、王子を始め、全ての国民は生きている。
目の前の鶏に感謝を示す王子を見ていると、ぎゅっと心が締め付けられた。
私は絶対、メロスリア王子を守る、その使命を改めて強く心に刻んだ。
「メロスリア王子は、この国になくてはならない存在なんです」
いつの間にか横に立っていたユリスが、私に向かって話しかけてきた。
「王様も大変心やさしい方で、王子もその御心を継いで成長されています。
私はこの国が大好きで、この国に産まれたことを誇りに思います」
彼女の目は優しく王子を見守っていた。
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