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その後も街を歩いていると、何人もの人が王子の元を訪ねてきた。
ある人は採れたての野菜を、
ある人は綺麗なお花を、
ある人は珍しい色の石を、
ある人は丁寧に編まれたマフラーを。
その都度、王子は畑へと行ったり、お家へとお邪魔したりして、「ありがとう」を伝えて回った。
気がつくと王子の乗ってきた馬車の中には、たくさんのお土産の山ができていた。
たくさんの寄り道をしながら街を回り、数時間が経ち、三人ともベンチに腰掛けていた。
果物屋がフルーツジュースを作ってくれて、今はそれを一緒に飲んでいる。
じいやは断ったが、王子が無理やり手渡してしぶしぶ飲んでいる。
「これ、美味しいですね!」
「でしょ!
この国の果物はとっても美味しいの!
みんながあいじょう込めて一生懸命作ってくれたからだって、お父様が言ってた」
「そうですね。
愛情たっぷりですね」
誇らしげに言う王子はとても可愛らしい。
柑橘系のジュースは酸味と程よい甘味があって、疲れた体の隅々に染み込んでくる。
果肉が口の中に広がり、ぷちぷちとした食感も楽しく、あっという間に飲み干してしまった。
「美味しかった!ごちそうさまでした」
ごちそうさまと手を合わせると、私の分のコップも持って果物屋まで歩いていった。
私も慌てて後を追う。
「ジュースとっても美味しかった!
いつも美味しい果物を育ててくれてありがとう」
「いいえ、いつも国を守ってくれてありがとうございます」
食器を返却すると、いくつか果物を購入して馬車に置きに戻った。
果物を購入しようとして「差し上げます!」と言われても、王子ははっきりと断っていた。
その前も別の野菜を購入したり、花屋では鉢植えの花を購入したりと、いただいたもの以上の買い物をしている。
「このお金で民は生活している、それを王は王子に対して、小さい頃から教育されています。
王も王妃も倹約家です。
ここで購入してきたものは無駄にすることなく、城でいただくことになります。
王子だけじゃなく、来賓の方々に振る舞われたり、私たちがいただくこともあります。
そのようにして経済は回っているのです。
民の好意を無碍にせず、でも民の生活を大切にするためにどのようにしたらいいのか。
メロスリア王子はまだ5歳ですが、とても聡明なお方です。」
隣に立っていたじいやが教えてくれた。
王子の行動の裏にそんな話があったなんて。
5歳の男の子とは思われない行動は多々あった。
全ては民のため、そう教育されてきたことが伝わってきた。
あなたは王子、いずれは王になるべくして生まれてこられた方なのですね。
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