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やたらと濁す東雲くんは目が泳いでいたけど、観念したかのように息をはいた。
「西條さん、この時間に時々ここで発声練習してるでしょ」
こんなこと言われると思わなくて、びっくりした。誰にも知られてないと思っていたのに。
「月が綺麗だったし、あの日、西條さんに会えたら告白しようって賭けてたんだ。結局言えずじまいだったけど」
薄暗いけど、東雲くんの照れ笑いが分かる。もう、分かってしまった。私も彼のこと好きなんだ。
「私も、好き、かも」
「かも、って何」
だって、安富先輩と付き合ってるって思ってたし、私のことをかわいそうに思ってるのかと……。だからそんなふうに東雲くんのこと考えたことがなかった。
「部活に戻れたらいいね」
「うん」
彼の柔らかいくせ毛の先が、私の頬をくすぐる。
「いつでも話聞くから」
顔の近さにぶっ飛びそうになったけど、周りが暗くて良かった。めっちゃ顔が熱い。
でも、溶けそうな柔らかい声に、私は溢れんばかりの力をもらった。今はまだ両親に分かってもらえていないけど、思いが伝わるまで私も努力しようって思った。
「ねぇ、いつから好きだったの? 私のこと」
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