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「違う違う! 責めるつもりは全然ないから」
「オレ、言い過ぎたかなって思ってて、ずっとそのことばっかり気になってた」
ふわふわなくせ毛をわしゃわしゃしながら申し訳なさそうに話す彼になら、何でも話せるような気がしてきた。
「あの、」
「あ、ちょっと待って」
話そうとした途端、慌てた東雲くんに止められた。キョトンとした私の耳元で囁かれた。
「今日……またあの海で会える?」
「え!?」
うわうわ、何、どういうこと、ちょっと待って。いやいや、よく分からない。
「今から部活あるから、もし大丈夫なら」
「あ、今日は塾だから、前と同じ時間ぐらいに通るけど……」
「分かった。じゃ、そういうことで」
頭で理解が追いつく前に、東雲くんは去っていった。一人残された私は、やっぱり意味が分からなくて頭を抱えた。
二人きりで? 海で? 会って? つまり、どういうことだ? 彼女いるのに?
ただ単に、今から部活で話す時間がないから、海で話そうって言ったのかも。東雲くんは優しいから、私のことをかわいそうに思って、話を聞いてくれるんだ。きっとそうだ。だんだん冷静になってきて、考えるほどに虚しくなってくる。ゆっくり階段を降りると、誰かの笑い声が廊下で響いて、私の足音が孤独に鳴る。
***
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