月は見ている

15/17
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 薄暗い。私たちしかいない世界で、波音だけが響いている。 「オレ、ずっと西條さんのこと見てた」  ん? 「頑張ってるの知ってたから、後悔してほしくなくて」  え、何。待って、すごくドキドキする。 「西條さんのこと、好きなんだ」 「ちょっと待った! 一旦落ち着こうか」  東雲くんと安富先輩は付き合ってて、私に告白? つまり、二股? いやいや、東雲くんそんな子じゃないでしょ? でも私が知らない違う顔を持ってるのかもしれないじゃん? そんなふうには思いたくないけど! 「ごめん、迷惑だった?」  頭を抱える私に、東雲くんも戸惑っているようだった。ちゃんとはっきりさせよう、私は深呼吸をした。 「安富先輩と付き合ってるんじゃないの?」 「え、付き合ってないけど……なんでそんな話に?」 「この前、ここで二人で会う約束してたんじゃないの?」 「あぁ、あれはたまたま安富先輩が通りかかって、オレに声かけただけなんだけど……」 「え、じゃあなんで東雲くんはこんなところにいたの? てっきり待ち合わせしてたんだとばっかり……」  怒涛の質問攻めに、東雲くんも若干引いてる気がする。 「それは、その、なんというか……」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!