月は見ている

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 歯切れ悪いな。本当はやめたくなかった。コンクールもみんなで行きたかった。   「そうなんだ」 「うん」  もうローファー履いてるじゃん。早く帰りなよ。それとも安富先輩を待ってるの? それなら私がさっさと帰ればいいんじゃないの? 「じゃあ、ね」  騒がしい昇降口では、たくさんの人が入り混じって、私の存在感は薄れている。誰も私を気にも留めないし、合唱部をやめたことだって、別に大したことではないんだ。 「ちょいちょい、え、なんでやめたの」  なんで構うの。私のことなんて、ほっとけばいいのに。 「私が部活やめた理由、東雲くんは興味ある?」   彼女いるんだし、私なんかに構ってないで、安富先輩と一緒に帰ればいいのに。 「ある。あんなに楽しそうに歌ってたのに、なんでかなって」  楽しそう……楽しかったよ。みんなの歌声が綺麗にハモった時は、最高に気持ちいい。でも……。 「世の中、やりたいっていう気持ちだけでは、どうにもならないことだってあるじゃん?」  精一杯の作り笑いに、自分の心が痛んだ。顧問も部員も引き留めてくれた。だけど、それだけじゃどうにもならないんだよ。 「もったいない。せっかく上手なのに」
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