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部活やりたかったら成績を上げればいいって、簡単にお母さんは言う。
「そんな簡単なことじゃないよな」
「ね、簡単そうに言うなっつーの!」
言っても仕方ない愚痴を、東雲くんに話せただけでも、少しスッキリした気がする。
「でもさ、親に言われるがままやってったら、何かあるたびに『親がそう言ったから』って、ずっと親のせいにして生きていくようになるぞ」
真剣なまなざしで見つめてきた東雲くんに、何も言い返せなかった。
「高校なんて、たった三年しかないんだ。後悔しない? 親に言われたからと言っても、その選択をしたのは自分だよ」
一瞬、口が開きかけたけど、言いたいことを飲み込んでしまった。
東雲くんに何が分かるの? 好きなバドやって、勉強もそこそこできて、人気もあって、彼女もいて。……嫌だ、私はただひがんでるだけだ。
ちょうど私が乗るバスがきた。ホッとして「じゃあね」とバスに向かった。
小さく笑う彼は、なんだか少し悲しげだった。その表情に後ろ髪を引かれつつも、私もうまく言葉が見つからなくて、つい目線をそらした。
バス停に東雲くんを残してバスが動く。バスに揺られながら、ずっと彼に言われた事が心の中で渦巻いていた。
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