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後日知ったのだが、彼は当時、巷で噂の"Zくん"という存在だったらしい。
どこからともなく現れて、人の心を救っていく、背中の"Z"が目印の男の子。都市伝説の中の少年。
あまりのとんでも展開だったので、今でも夢か幻か、と思うことはある。でも、確かに私は救われた。成績のことでぐずぐず思って、自分の価値を見失っていた私に、彼はささやかではあるけれど、目標をくれた。
死にたくなったら、彼を探して彼を手伝ってからにしよう。
彼の笑顔の手助けができるなら、私も捨てたもんじゃないかもしれない。
そう思えたのだから。
肩にかけた大荷物を、反対の肩にかけ直した。
もう一度、天頂近くにある満月を見た。黒い人影が横切った気がした。小柄な少年のシルエット。
彼は今も、小学生の姿で街を飛び回っているのだろうか。
でも、彼の笑い顔を思い出したら元気が出てきた。
ひとまず。
家に帰ってお風呂に入って寝るまでの元気だけど、十分だった。
おわり
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