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彼に遭ったのは高校1年の時。学校の成績が落ちる一方で、自分ってこんなに頭が悪かったんだと、絶望していた頃だった。
勉強はそれなりに好きだったのに、先生の言っていることは宇宙の言葉みたいに意味を持ったものに聞こえないし、クラスメイト達は、しれっとスマートに宿題をこなして、そのうえで部活動にも積極的に参加し、アクティブでアグレッシブで、キラキラしていて、私とは大違い。
完全に失敗したと思った。何もかもに、失敗した。
こんな自分は生きていけるのだろうか。生きていていいのだろうか。
帰宅途中の歩道橋の上で、そんな風に思って盛大なため息を毎日ついていた。
あの日も、家に帰るのがおっくうで、とにかく一人でいたくて、歩道橋でぼーっとしていた。ちょうど、道の向こうから、満月も登ってきていて、大きいなーきれいだなーと無感情に眺めていた。
眺めながら、あっちに行けたらいいのになー、と思った。
(今思い出すと、なんともこっぱずかしい。悲劇のヒロインみたいな感傷に浸ってたようなもんだ)
とはいえ、当時の私にとっては、人生最大の絶望の中にいたわけで。
彼に声をかけられて、我に返っても、取り繕うこともできなかった。
彼は言った。
「なあ、あんた飛び降りるんか?」
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