万城目医院

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万城目医院

 当初、遺体なき殺人事件として捜査は難航すると思われた。  しかしある事をきっかけに、事件は解決へ向かった。  ボクたちがその万城目(まんじょうめ)医院を訪れたのは、男の失踪事件から一週間ほど経ってからだ。  あることから事件の容疑者として万城目タケルの名前がリストアップされた。  ボクの名前は富田翔。神奈川県警の刑事課に配属された。新米の刑事だ。  診察室にはボクの他、神奈川県警の石動(イスルギ)リオ警部補とビジュアル系弁護士の織田シンゴ、そしてバンドメンバーのヒデの四人が(おもむ)いた。  織田シンゴは弁護士の肩書きを持ったミュージシャンだ。ビジュアル系ロックバンド『ワイルドプリンス』のギター&ボーカルを担当している。ビジュアル系弁護士という二刀流だ。  ヒデは同じくロックバンドでドラムを担当していた。  診察室は異様に消毒液の臭いがした。慣れるまでかなり時間を要するだろう。  ボクたちが診察室へ入ると、すぐに無駄に美人と呼ばれるリオ警部補が会釈した。 「万城目医院長ですねえェ……」 「ええェッ、どちらの方が患者さんですか」  医院長の万城目タケルはボクたち四人を見て困惑したように苦笑いを浮かべた。年配の優しそうな医師だ。昔はイケメンだっただろう。  机には家族と犬が映っているフォトフレームが飾られていた。医師の万城目タケルと奥様、そしてお嬢さん三人の家族写真だ。娘は小さな犬を抱いていた。  マルチーズに似ていて白くてフワフワして可愛らしい小型犬だ。娘にもよく懐いているみたいだ。 「お忙しいところ失礼ですが、私たちはここへ診察に来たわけではありません」  警部補の石動リオが笑みを浮かべ応えた。 「ほォ、ではどういった用件でしょうか?」 「私は神奈川県警の石動(イスルギ)リオと申します」 「ン、県警の方ですか?」 「ハイッ、ボクも神奈川県警の富田と申します」  すかさずボクは警察手帳を提示した。 「ふぅん」医師の万城目はあまり気乗りしないようだ。生返事をした。 「ボクはビジュアル系弁護士の織田シンゴです」 「えェッ、ビジュアル系弁護士?」  医師の万城目は信じられない様子でシンゴを見つめた。  当然だろう。見た目は茶髪のロン毛でロックミュージシャンといった装いだ。  とてもではないが弁護士には見えない。ビジュアル系弁護士など前代未聞だ。  
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