遺体をバラバラにして

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遺体をバラバラにして

「いえ、ですがラブホテルの部屋へ入る時も出る時も女性は旅行用の大きなキャリーケースを持っていたんです」  弁護士のシンゴが万城目医院長に防犯カメラの映像を見せながら説明をした。 「じゃァ、もう一人の男性はそのキャリーケースの中へ隠れていたと言うんですか?」  医師の万城目はふて腐れたように聞き返した。 「そうですね。しかし普通に男性がキャリーケースの中へ入るには、少しばかり小さ過ぎます」 「ふぅん、だったら無理じゃないですか?」 「ええェッ、まァ普通の状態ではね」 「はァ、それじゃァ普通じゃない状態と言うのは何なんですか?」 「そうですね。例えば部屋へ入った女性が男性を殺し、その遺体をバスルームで手足をバラバラにしてキャリーケースに詰め込んで部屋から抜け出したのではないかと考えられます」 「えッ、遺体をバラバラにしてキャリーケースの中に。フフゥン、バカバカしい」  医師の万城目は鼻の先でせせら笑った。あざ笑うかのようだ。 「ハイッ。まァバカバカしいお話しですが、今のところそれ以外、考えられません」  シンゴはジョークでも言うように肩をすくめた。 「お医者さんならメス一本で遺体をバラバラに出来るでしょう?」  さらに警部補の石動リオが言葉を添えた。 「えェ、はァ、そうですね。まァ可能ではありますが」 「被害者の男性は仮にA氏としておきましょう。A氏は、普段は真面目でトラブルなどなかったのですが、特殊なクラブへ通っていました。そこでは女装家として有名だったようです」 「特殊なクラブで女装家?」 「そう、はじめはハロウィンなどでコスプレしていたのですが、徐々に女装にハマったそうです」 「ふぅん」 「そして段々とエスカレートして、クラブへ足繁く出掛けていった。ですが、A氏はたびたび他の女性客とトラブルを起こしていたようです」 「トラブル?」 「ええ、キレイに女装して女性の振りをして別の若い女性に接近し、アルコールに睡眠薬を混ぜ、相手の自由を奪いラブホテルで不同意性行を迫っていたと言います」 「ほォ、ではその女性とトラブルで?」 「ええェ、そうですね」 「そういえば万城目先生にもお嬢さんが居られますね?」  弁護士のシンゴはフォトフレームに飾られた写真を指差した。
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