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信長の末裔
またビジュアル系弁護士のシンゴは万城目を指差した。
「あなたはA氏に連絡を取り、お嬢さんのことで話があるとアポをつけた。だがA氏は不同意性行を認めず謝りもしなかった。そしてふてぶてしい態度にカッとなったあなたと喧嘩別れになった」
「……」
「あなたは大事なお嬢さんを傷つけられ、復讐を思い立った。そして女装してA氏をラブホテル『ネオエデン』へ誘い出した。その後、部屋でA氏を殺害しひと晩かけてバスルームで遺体を解体してキャリーケースへ詰め込んで部屋を出たんですね」
「くうゥ……」
医師の万城目は小さくうめき声を上げた。
「今一度、申しましょう。信長の末裔、織田シンゴが!」
「な、なにィ、信長の末裔?」
「鳴かぬなら裁いてくれようホトトギス。天に代わってお前の罪を!」
ビジュアル系弁護士の織田シンゴはポーズをつけて万城目を指差した。
「ううゥン……」
医院長の万城目も観念したようだ。
重苦しい沈黙が宿った。
やがて万城目が重い口を開いた。
「ううゥッ、あの子がね。自殺を図ったんだよ」
「え、お嬢さんがですか?」
「ああァ、あんなクソみたいな男にあの子が汚されたのが、どうしても許せなかったんだ」
「ハイ……」
「それにしても、まさか。飼い犬に手を噛まれるとはなァ」
医師の万城目は哀しげに飾られた写真を見つめた。可愛らしい子犬を抱いた娘が映っていた。
「さァ、よろしかったら行きましょうか」
石動リオが声をかけた。
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