6人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
孫と黙って月を眺めていると、一人の男性がやってきて私たちに声をかけた。
「父さん」
「ああ、昴か」
息子の昴は少しだけ困った顔をして、それを隠すように微笑んだ。
「例のスバルには会えた?」
「いや、今日も来なかったよ」
「そう。じゃあ帰ろうか。ショウゴ、悪かったな」
息子は私の左腕を支え、私はゆっくり腰を上げた。孫が、ああ眠い、とあくびをした。私は上着のポケットから擦り切れた封筒を取り出し、中から白い羽を取り出した。息子と孫は黙って私の手元を見ている。この前、古い図鑑を片づけていて見つけるまではすっかり忘れていた思い出が、昨夜の出来事のようにありありと思い出された。
この白い羽根は、きっと公園に落ちていたのを寝ぼけて拾っただけだろう。半世紀も前の記憶はすっかり薄れてしまっているが、そうに決まっている。それでも私はこの羽根を見るたび、時空を一緒に超えた友だちのことを思い出して胸がときめく。
*The end*
最初のコメントを投稿しよう!