月に叢雲

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「こんばんは」 「こんばんは」  挨拶をするだけの関係。ちょうど買えるくらいの時間に犬の散歩をしている人がいる。別に毎日というわけではないけれど週に二回か三回くらいは会う人だから顔なじみになってしまった。  連れている犬はふわふわとした白い犬で月明かりにも妙に映える。その人は安全の為なのか明るめの色の服を着ていて夜は犬と服がぼんやり浮かんでいるようにも見える。  今日は月がきれいだなあと思って見上げるとちょうど雲がかかってくるところで首の角度からなんとなく今すれ違ったばかりのその人の方を振り返る。街灯の下のその人は雲がかかっていく月と同じようにすうっと消えていった。
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