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青パパイヤの衝撃、の巻
ナス女には、渋谷のヴィレッジバンガードで、
1、トイストーリーのバズ・ライトイヤーのフィギュアと、
2、都こんぶと、
3、ジェリーベリーというメーカーのジェリービーンズを二袋買え。
とそう指示されていた。
それらを全部手にしてレジに向かうと、缶バッジのいくつもついた黒エプロンをつけ、髪を蛍光色のような緑色に染めた女の子の店員さんが、ジッ、とこの私を見つめた。
袋詰めしてもらって会計をすませると、小さな声で、
「奥へどうぞ」
と言われた。
「……えっ。おっ、奥っ?」
店員さんは、そう聞いた私をまたひとしきり冷たい目で眺めるとーー小さくため息をついたあとで、ひどく面倒くさそうに、顎をあっちだ、とばかりに軽く上げた。
店員さんは、その後私とまったく目を合わせようとはせず、ただ人形のようにその場に突っ立って、次のお客さんを待っていた。
その様子に、私は少し不気味なものを感じていた。
すれ違うヴィレバンの店員さんには、さっきのレジの子と同じような、そんな軽蔑するような視線を向けられた。その後でまったく無関心な表情になるのも同じだ。
示された方へいってみると、そこにはSTAFF ONLY、と書かれた扉のある、出口へと続く通用口があった。軽い階段を上がっていくと、右手がセンター街へと向かう出口に通じていて、正面に冊で封じられた通路がある。
出口なわけはないので仕方なく、私はその冊をよけて、正面の通路を進んでいった。と、さらに下へと降りていく階段があった。
こちらへ進め、的な案内がさっきから何もないので困り続けていたけど、私はその階段を降りていってみることにした。
2フロアくらい、その暗い階段で降りていくと、その先に廊下に続く光が見えてきた。その角に、メガネをかけたスーツ姿の女性が一人、立っていた。
「……初めての、方ですか?」
その、メガネをかけてひっつめ髪にした女性はそう聞いた。首からIDカードのようなものをかけていて、英語で細かく何かが書かれてあるが、よく見えない。
「は、はい」
「でしたらこのまま進んで、あの角の部屋に入ってください。これからブリーフィングが始まりますので」
「……ブリーフィング?」
聞いてもそれ以上、その女性は何も答えなかった。そのかわり、さっきのレジの店員と同じような、理解の遅い人間をバカにするような、そんな視線を向けてくる。
恐る恐る、その部屋に入ると、正面に何も書かれていないホワイトボードがあり、それに向かって長テーブルが六つ置いてあった。そして二脚ずつ、パイプ椅子がついている。
そのテーブルには一人ずつ、二人の女性がこちらに背を向けて座っていた。
私は空いている席にそっと腰をおろすと、ヴィレバンの包みを足元に置いた。見ると他の二人の足元にも、同じものが置かれてある。
ナス女にそうするよう指示されたとき、私はたまたまその四点を購入するような人もいるんじゃないか、と聞いてみた。でも彼女いわく、その確率はおおよそ五百万分の一だと計算されているらしく、心配する気づかいはないのらしい。
お財布の中から、さっきのレシートを取り出して見ると、六千三百五十円も取られていた。バズ・ライトイヤーのフィギュアが五千円近くしたせいだ。
だいたい、私はトイストーリーにもバズ・ライトイヤーにもいたって何の興味もないし、都こんぶはまあいいとしても、ジェリービーンズもそんな好き好んで食べるものでもない。
しがない派遣社員の自分にとっては、このイミフな出費は痛すぎる。
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